同室避難・同行 / 同伴避難の違いと必要性
豆知識
災害が発生し避難勧告などが発令されたとき、人間は迷わず避難所へ向かうことができますが、ペットと暮らしている人はそう簡単ではありません。ペットを連れて避難できる場所は限られていますし、避難方法もさまざまです。避難所が見つからない場合は車中泊をしたり、自宅にとどまったりする選択を余儀なくされ、危険に晒されてしまう可能性もあります。
ペットと避難ができる避難所が見つかっても、必ずしも一緒に生活ができるわけではありません。今回はペット避難の種類を知り、その必要性について考えてみませんか。
同室避難と同行 / 同伴避難の違い
ペットと避難する方法は、大きく分けて三つあります。それぞれ「同行避難」「同伴避難」と呼ばれており、以下の違いがあります。
- 同行避難
ペットと一緒に避難所など、安全な場所まで避難すること。災害時の原則となっていますが、ペットと一緒に避難所には入れないことがほとんどです。 - 同伴避難
飼い主とペットが同じ場所で避難生活を送ること。必ずしも同室で過ごせるわけではなく、生活スペースは異なる場合が多い。 - 同室避難
飼い主とペットが、同じ安全な室内で一緒に避難生活を送ること。
現在、同行避難は原則として考えられていますが、同室避難が実現できている避難所はまだまだ少ないのが現状です。
ペットと飼い主が非常時に離れて暮らすことは、お互いの姿が見えないためにストレスがたまり、心身状態に良いとはいえません。また、精神的なダメージで寿命が縮まってしまうおそれもあります。少しでも安心して避難生活を送るためにも、これから求められるのはペットとの「同室避難」ではないでしょうか。
なぜ、ペットと一緒に避難する必要があるのか
そもそも、なぜ同行避難が原則になったのでしょうか。
災害時には何よりも人命が優先されるのは間違いありませんが、ペットを飼っている人にとっては大切な家族であり、置き去りにして逃げることはできない存在です。そのため、ペットと同行避難をすることは、動物愛護の観点だけでなく、飼い主である被災者の心のケアの観点からも大切なことなのです。
平成7年の発生した阪神淡路大震災の活動報告書「兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録(兵庫県南部 地震動物救援本部活動の記録編集委員会編.1996)」でも、その重要性が記載されています。
また、同行避難はペットを飼っていない人にとっても、非常に重要な意味を持ちます。平成12年の三宅島噴火被害や平成23年の東日本大震災では、 放浪状態のままに放置されて野犬化した犬が住民に危害をもたらすおそれや、不妊処置や去勢がされないまま放浪状態となった犬や猫が繁殖し、 在来の生態系や野生生物に影響を与えてしまう危機も生まれました。結果として、被災地に人員を派遣して、保護や繁殖制限措置を取らなければならない事態を招いてしまったのです。
このような問題を減らしていくためにも、災害時ペットとの同行避難を推し進めていくことは非常に重要なことです。そうした過去のできごとを踏まえ、現在ではペットとの同行避難が原則となっているのです。
もちろん、飼い主とペットが安全に避難するには、 飼い主自身の安全の確保が大前提です。東日本大震災では、いったん 避難した飼い主がペットを避難させるために自宅に戻り、津波に巻き込まれたケースや、発災が平日の昼間だったことから、飼い主が自宅にいなかったケースもありました。こうした事例でわかるように、災害が起こった時に飼い主がペットと一緒にいるとは限らないことや、人命を優先させるためにやむを得ずペットを自宅に残して避難せざるを得ない状況もあること、また、不 測の事態によりペットとはぐれてしまうケースなどがあることも想定しておかなければなりません。
こうした状況を踏まえたとき、飼い主責任による同行避難は前提にはありますが、個人での対応には限界があることがわかります。そのため、自治体等が飼い主の支援体制や、放浪動物、負傷動物等の救護体制などをあらかじめ調べておきましょう。もしはぐれてしまったときも、問い合わせ先や捜索方法を知っておくだけでも、安心に繋がります。
もしものときに、焦らず最善の方法を取るためには、日頃の準備が大切です。自分とペットの命を守るために、ぜひ正しい知識を身に着けていきましょう。