りく・なつ防災コラム

ペット災害支援の用語を知ろう

豆知識

巨大地震への警戒が強まっている昨今、どの地域にお住まいでも、被災の恐怖は他人事ではありません。人とペットが少しでも安全に避難生活を送れるよう、日頃から災害に対する知識を身に着けておくことは非常に重要です。

今回は、災害時のペット避難に必要となる用語を解説します。そうした用語を知ることでいざという時に迷うことなく、自治体での支援内容を理解できるようになります。

少し難しい用語もありますが、ぜひ知識として学んでみてはいかがでしょうか。

 

ペットと避難にまつわる用語集

● ペット

家庭動物などのうち、犬や猫などの小型の哺乳類と鳥類などを指します。ただし、特定動物や特定外来生物に指定された動物、これらに類する動物は含みません。

 

● 適正飼養

幅広い意味を持つ用語ですが、通常、人間社会の中でペットを飼う際に最も重要となるのは、ペットを飼うことが他人の迷惑にならないようにすることです。特に大勢の避難者が共に生活することを強いられる災害時には、この観点からの適正飼養が重要なものとなります。そのためには、平常時からのペットの十分なしつけや準備が必要です。

またペットの飼養者は、ペットの健康と安全を守る責務も負うこととなります。この観点からの適正飼養とは、それぞれのペットの習性などを踏まえた、ペットの健康や正常な行動のための適切な飼養を表します。しかし災害時には、人の健康維持に必要な環境さえ期待できない状況のなかで、ペットの飼養のために必要十分な環境を整えることは難しいことも事実。したがってペットの飼養者は、他人に迷惑がかからない状況の確保を常に考えながら、ペット自体の健康と安全が確保できるように努める必要があります。

参考:りく・なつ同室避難推進プロジェクト「ペットと防災」 02 ペットのしつけと健康管理

 

●「自助」、「共助」、「公助」

「自助」とは、自分で自分の身を助けること。他人に依頼せず、自らの力でことを成し遂げること。「共助」とは、互いに力をあわせて助け合うこと。「公助」とは、行政機関などの公的機関が援助すること、といった趣旨で用いられています。

わたしたちはこれらの考え方を、防災の面から以下のように仮定して用います。

  • 自助
    「自分の命は自分で守る」という意味で防災の基本。特に発災直後の行動は、自身の安全を確保するために避難すべきか、そのまま留まるべきかの判断に始まり、自己が所有し管理するペット の安全確保や飼養も「自助」が原則となります。通常、災害時の対応は、自助が7割とも8割とも言われています。
  • 共助
    企業、地域の集まりなどのコミュニティのメンバーが共に助けあうこと。「自助」による個人の安全の確保が前提条件となります。
  • 公助
    行政機関による支援活動であり、初動が遅れる傾向にあるので、「公助」が開始されるまでは実質的に「自助」や「共助」が災害対応上の主体となります。なお、「公助」が開始された後も「自助」が原則です。

 

● 広域支援

大規模な災害の発生時に被災自治体等の機能を復旧し、災害救援活動が開始できるように外部(被災していない自治体等)から支援する仕組み。支援の内容は、機能復旧や救援活動のための人員派遣、意思決定のための情報や資料の提供、災害に関連する情報の収集と発信、現地動物救護本部等の立ち上げのための関係機関等との調整、物資や技術、義援金の支援など多岐にわたります。

 

● 受援

受援とは、支援を受けること。支援を受ける際に迅速な受入れ体制がとれるように、その方法や手順をあらかじめ検討し、決めておくことが大切です。

 

● 避難所

災害時に避難するための施設や場所を示す総称。市区町村により指定された指定避難所の他、近隣の公園や駐車場などに住民が集まって生活を始める自発的な避難所もあります。

 

● 指定緊急避難場所

居住者などが災害から命を守るために緊急的に避難する施設または場所で、市区町村長は「災害の種類に応じて適切な避難場所を予め指定しておくこと」とされています。
この災害の種類の例としては、「洪水」、「崖崩れ、土石流、地滑り」、「高 潮」、「地震」、「津波」、「大規模な火事」及び「内水氾濫や噴火(火山現象)」などがあり、その種類によって、指定を受けた避難場所が異なることに 留意が必要です。また、指定緊急避難場所が指定避難所を兼ねる場合もあります。

参照:内閣府による指定緊急避難場所の指定に関する手引き:平成29年3月 http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/pdf/shiteitebiki.pdf 

 

● 指定避難所

避難した居住者などが災害の危険がなくなるまで一定期間滞在し、または災害により自宅に戻れなくなった居住者などが一時的に滞在する施設で、市区町村長が指定したもの。
一般的にペットの受入れが課題となるのは、この指定避難所です。

 

● 在宅避難

地震などの災害の際には、まず、より安全な場所に緊急に避難するが、その後に自宅の安全性が確認され、自宅で継続して居住できると判断した場合に、避難所などのような他所ではなく、自宅で避難生活を行うことを指します。避難生活の基盤が自宅にあれば、食事や入浴などの支援を避難所などで受けていたとしても在宅避難にあたります。なお、災害時に被災者が集中し、指定避難所への収容が困難になる可能性がある大都市部などでは、強固な建築物などに居住する住民に対しては、在宅避難を薦めている自治体もあります。

 

● 同行避難

災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること。同行避難とは、ペットと共に移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではありません。

なお、「避難所運営ガイドライン」(平成28年4月内閣府)では、「同伴避難」という用語が用いられています。「同行避難」が、ペットとともに安全な場所まで避難する行為(避難行動)を示す言葉であるのに対して、「同伴避難」は、被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態) を指します。ただし、同伴避難についても、指定避難所などで飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではなく、ペットの飼養環境は避難所等によって異なることに留意が必要です。

参考:りく・なつ同室避難推進プロジェクト「ペットと避難」03 ペットとの同行避難

 

● 現地動物救護本部等

自治体、地方獣医師会、民間団体等が、災害の発生時に被災地において動物救護活動を実施し、被災ペットや飼い主に対して必要な支援を行うために設置される組織。被災地から避難したペットと飼い主を支援するために、近隣の自治体に設置されることもあります。

 

● 一般財団法人ペット災害対策推進協会(略称:ペット災対協)

天災や人災などの不測の緊急災害時に、被災したペットの救護や円滑な救護活動の確保を目的として、(公財)日本動物愛護協会、(公社)日本動物福祉協会、(公社)日本愛玩動物協会、(公社)日本獣医師会などを主な構成団体として、平成8年に設置された「緊急災害時動物救援本部」の事業と資産を引き継いで設置された広域組織。平成26年に法人化されています。

災害時のペットの救護支援だけでなく、ペットとの同行避難の普及啓発、災害時の救護ボランティアの育成や研修、全国各地の災害対策用資材の備蓄基地の整備など、災害発生に備えた平時からの活動を目的としています。特に災害の発生時には、被災地の自治体や獣医師会、現地動物救護本部などと連携を取りながら被災ペットの救援物資や資金などの提供活動を行うとともに、現地の動物救護本部などが行う被災ペットの救護のための義援金募集事務の代行などを行います。

 

● 動物救護施設

災害時に被災ペットの一時保管や、負傷動物、放浪動物を収容する施設。自治体の保健所や動物愛護センター、民間団体が運営する保護施設など既存の動物飼育施設や敷地を利用して被災ペットを収容する場合と、適切な施設などが確保できない場合や既存施設では収容しきれない場合に、臨時に増設または新設して収容する場合があります。

動物救護施設は、災害発生時の緊急時対応を目的とした時限的な施設であり、災害時対応が終息した場合は、発生前の状態に復するのが一般的である。

 

● 所有者明示

ペットに迷子札、マイクロチップ、鑑札、狂犬病予防注射済票などを装着することにより、飼い主の氏名や連絡先などが把握できるよう明確にしておくことを指します。このことにより、ペットと飼い主がはぐれた場合でも第三者が飼い主を特定でき、素早い返還へとつながります。なお、飼い主の名 前や連絡先などが特定出来ない首輪のみの装着は、所有者明示としては不十分と言わざるを得ません。また、マイクロチップを装着した場合は、(公社)日本獣医師会などにマイクロチップ番号と連絡先などを登録しておくことが必要です。

参考:りく・なつ同室避難推進プロジェクト「ペットと防災」03 マイクロチップ等によるペットの所有者明示

 

● 放浪動物

災害により飼い主とはぐれるなど、何らかの理由で放浪状態となり、飼い主による飼養管理が受けられなくなったペットを指して使用しています。もともとその地域にいた野良犬や野良猫などは含みません。

 

いかがでしたか? 様々な用語がありますが、正しい知識をつけることで、もしもの時の行動に役立つことがあるかもしれません。大切な命を守るために、今できることを始めていきましょう。

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