自治体の支援の例
豆知識
災害が発生した時、自助を基本として行動するのは前提ですが、避難の必要がある場合や、ペットとはぐれてしまった場合など、自治体を頼ることも多くあるかと思います。今までの災害において、各自治体でどのような支援があったのかを知っておくことは、今後もし被災してしまったとしても、有用な知識となります。これから紹介する過去の事例を、ぜひ災害対策の参考としてください。
広域支援の事例
平成23年 東日本大震災
国が行った支援
- 被災地の避難所に動物用ケージ1895個・テント56張りなどを提供し、避難所でのペットの飼養を支援した。
平成23年 福島県第一原子力発電所の事故に伴う動物救護活動
国が行った支援
- 緊急避難により被災地に残されたペットの救護活動を、福島県と協力して実施した。
- 人員の派遣、動物保護シェルターの設置、取り残された動物の保護などを行った。
自治体が行った支援
- 環境省と福島県が実施した警戒区域内からの動物救護活動に対し、全国の自治体から人員を派遣し、被災地に残されたペットの救護活動に協力した。
平成28年 熊本地震
国が行った支援
- 被災地に職員を派遣し、熊本地震ペット救護本部の立ち上げを支援した。
- 九州・山口9県災害時愛護動物救護応援協定参加自治体に行政獣医師の派遣を要請し、各避難所におけるペットとの同行避難の状況などを調査した。
- 応急仮設住宅建設予定の県内の市町村にペットの飼養を要請した。
自治体が行った支援
<一時預かり・譲渡>
- 九州・山口9県災害時愛護動物救護応援協定に基づく九州自治体内での一時預かり・譲渡を行った。九山協定による譲渡数は鹿児島県(犬1頭)、福岡市(犬7頭)、福岡県(犬3頭)、計犬11頭であった。
- 自治体の要請による一時預かり・譲渡は、東京都の猫5匹など、合計で犬17頭、猫55頭であった。
- 被災動物の一時保護のため、熊本市動物愛護センターで収容されていた動物の一時預りと譲渡に協力した。
<人員支援>
- 熊本地震ペット救護本部の構成団体である(一社)九州動物福祉協会が設置した「熊本地震ペット救援センター」(大分県玖珠郡九重町)の運営支援として、九山協定に基づき九州各県と山口県から人員を派遣した。
- 全国自治体による人員派遣による支援は以下の通り。
全国知事会要請:岡山県6名(4月27日〜5月31日)東京都9名(6月6日〜7月1日、8月3日〜9月27日)九州知事会要請:鹿児島県2名(6月13日〜6月24日)
獣医師会が行った支援
- (公社)日本獣医師会は被災地の獣医師会に対し、人員支援として事務職員を派遣し、現地救護本部の設置を支援した。また地方獣医師会の協力を仰ぎ、継続的に獣医師を派遣し、拠点を設けて熊本県獣医師会とともにペットの健康相談を行った。
相談内容の内、治療を要する動物は診療可能な動物病院に紹介した。また、(公社)日本獣医師会内で集めた義援金を用いた診療券を作成して配布。これにより、被災者は1人につき、2万円までのペットの診療補助が受けられ、また診療を行った動物病院に対しては、義援金から診療費が支払われた。この結果、被災地の動物病院が安心して獣医療支援を行える環境が整備された。
さらに、熊本地震による被災者が飼養するペットを一時預かりする目的で緊急に整備・開設された「熊本地震ペット救援センター」(現在は九州災害時動物救援センター)について、(公社)日本獣医師会が「特定寄付金及び指定寄付金に関する指定」を受け、募集した義援金を活用し、同センターの施設改修・整備を行った。
ペット関連業界が行った支援
- ペット災対協がテントやケージを調達・送付し、加盟企業は原価で出荷するなどの協力を実施。義援金の募集を代行。(一社)全国ペット協会が被災動物などの移送に協力した。
(一社)日本ペットサロン協会が被災ペットのトリミングなどによる衛生管理に協力した。
動物収容施設の事例
以上を見ると、ペット支援が国以外の地方自治体や団体などで本格化したのは、平成28年に発生した熊本地震がきっかけとなっているものが多いとわかります。こうした被災を乗り越える中で、人はもちろん、ペットに対しての支援も広がっていくことを期待したいですね。
続いては、自治体などが設置した動物収容施設の事例をご紹介します。飼い主からの一時預かりや、保護・収容した負傷動物や放浪動物を飼養管理する際に必要となる施設ですが、設置には「早急な設置と運営を目指すこと」と「収容動物のストレスを軽減できる飼養環境の整備」とのバランスが重要となります。限られた資金や時間の中で、動物たちがストレスによる病気を発症することのないよう、細心の注意を払って取り組まれています。
動物愛護センター等既存の施設を利用した事例
仙台市動物救護本部(東日本大震災)
- 東日本大震災時には仙台市動物管理センターを中心に、負傷動物や逸走動物の保護・収容を行った。健常な動物については本部構成団体であるボランティア団体が一時預かりなどを行った。
- センター収容動物の譲渡会を早くから開催することにより、センター収容動物数が過密になることを防ぎ、新たなシェルターを設置することなく対応することができた。
新たな施設を設置した事例
東京都・東京都動物救援本部(東日本大震災東京都動物救援センター)
- 大震災で被災地から都内に避難してきた住民のペットの一時預かりなどを行うために、新たな動物救護施設が設置された。
- 飼育舎、事務棟、治療棟、犬用パドックなどを設置し、預かり動物の飼養管理、健康管理、返還・譲渡に係る業務を行った。
- 三宅島噴火災害時対応の経験を生かして、飼養管理者が使いやすい施設を設置するとともに、収容動物のストレス管理や感染症予防対策、逸走予防対策などで工夫した。
いかがでしたか。災害時には国や自治体をはじめ、様々な人々の協力で支援体制を築いています。いざ被災した時にパニックに陥らないよう、自身が暮らす自治体ではどのような支援を行う予定があるのか、またどこに連絡をしたら良いのか、平常時からしっかりと調べて備えておきましょう。
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出典
「人とペットの災害対策ガイドライン」(環境省) P.12-14 / P.130-131
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002/0-full.pdf
【広域支援の事例 / 動物愛護センター等既存の施設を利用した事例 / 新たな施設を設置した事例】を加工して作成