りく・なつ防災コラム

猫の日に考える、「諦めない」ための防災

防災対策

2月22日は「ニャンニャンニャン」の語呂合わせで「猫の日」。愛猫との暮らしは、その柔らかな毛並みや、気ままな振る舞いに癒やされることも多いはず。ですが、ふと想像してみてください。もし今、大きな災害が起きたら、あなたと愛猫はどこで夜を明かしますか?

うちの猫は臆病だから、避難所なんて絶対に無理

鳴き声や脱走が怖くて、周囲に迷惑をかけてしまう

そう考えて、最初から避難所という選択肢を消してしまっている猫飼いさんは少なくありません。しかし、さまざまな災害に立ち会う中で、私たちがアップデートすべきは「諦め」ではなく、「猫の習性に根ざした避難のスタンダード」を求める勇気です。

場所を愛する猫だからこそ、切り離せない「同室避難」という選択肢

猫は「場所に付く」と言われるほど、自らのテリトリー(縄張り)に深く依存して生きる動物です。知らない場所、知らない匂い、知らない音。避難所という過酷な環境下でのストレスは、猫にとって単なる不快感と片付けられるものではありません。

極限の緊張から食事をまったく摂らなくなる「食欲廃絶」や、環境の変化が引き金となって発症する「特発性膀胱炎」など、猫にとって環境が激変することは、文字通り「生死に関わる問題」です。そこで重要なのは、猫にとっての「家」を、避難所の中にポータブルに再現できるかどうかです。飼い主の匂いがする布団、使い慣れたケージ、そして何より「信頼する飼い主がすぐ隣にいる」という安心感。これらが揃って初めて、猫はパニックを抑え、生存のための日常を繋ぎ止めることができるのです。

そのため「同室避難」をスタンダードな取り組みにすることは、猫にとっても非常に重要な課題といえます。

「サイレント・マイノリティ」が陥る孤立の罠

犬のように散歩で外に出る機会が少ない猫の飼い主は避難生活において、不安感や周囲への気遣いから声を上げることができなくなってしまう、いわゆる「サイレント・マイノリティ」になりがちです。「猫が鳴いたらどうしよう」「脱走したら追い切れない」という健気な遠慮が、飼い主を車中泊や半壊した自宅へと追い込み、行政の支援が届かない場所へと孤立させてしまいます。

「同室避難」のスタンダード化は、こうした声を上げにくい猫飼いさんを救うための、究極の「インクルーシブ防災」でもあります。猫の習性を理解した適切なゾーニング(空間分離)がなされ、飼い主が24時間体制でケアできる環境があれば、猫の不安は最小限に抑えられます。

同室避難は猫と離れたくない、かわいそうといった感情的な議論だけに終始する問題ではなく、避難所全体の秩序と公衆衛生を保つための、最も合理的で人道的な解決策なのです。

【「もしも」の隙を作らない】猫のための脱走防止と個体識別の徹底

とはいえ、避難生活において、猫の飼い主が最も恐れるのは「脱走」です。見知らぬ場所でパニックになった猫は、驚異的な身体能力で隙間を抜け、一度姿を消せば呼び戻すことは困難を極めます。だからこそ、日頃からの「命綱」の備えが不可欠です。

  • 「二重の守り」を習慣にする
    避難移動時はもちろん、避難所内でも「ハーネス+リード」を装着した上でキャリーに入れる「二重の対策」を徹底しましょう。また、キャリーの扉が不意に開かないよう、結束バンドやナスカンでロックする備えも日常から点検しておきたいポイントです。

  • 「外さない」個体識別を
    万が一離れ離れになった際、唯一の希望となるのが個体識別です。装着が義務化されたマイクロチップに加え、一目で「飼い猫」とわかる首輪と迷子札(連絡先明記)のダブル使いを推奨します。特に猫は、首輪を嫌がって外してしまうこともあるため、日頃から「負担の少ないセーフティ首輪」に慣れさせておくことが、いざという時の再会率を大きく左右します。

【命を繋ぐ情報】「災害時の心構え」と「防災ブック」の活用

災害発生時、人間と同時にペットの安全を確保しなければなりません。この一連の流れを頭に入れておくことが、迷子や逸走を防ぎ、命を守ります。

  • 地震の心構え:サイト内の「地震災害時の飼い主の避難フロー図」を確認し、「揺れがおさまってからどう動くか」を家族全員でシミュレーションすることを促します。
  • その他の災害の心構え:地震だけでなく、台風や大雨による洪水・土砂災害の場合は、「垂直避難」や「広域避難」など、危険が迫る前に早めの避難行動をとる必要があります。ハザードマップを確認し、災害の種類ごとに最適な行動を確認し、家族や友人と暮らしている場合は、みんなで話し合っておきましょう。

それでも、愛猫と離れ離れになってしまった時、または、飼い主さんが怪我で動けなくなった時など想定外の事態は訪れます。愛猫の命をつなぐための「情報」を整備しておきましょう。

  • 防災ブックの作成:サイト内の「ペット防災ブック」をダウンロードし、ワクチン接種歴、投薬履歴、かかりつけ医など、愛猫の命を守る情報を記入しましょう。
  • 常時携帯のすすめ:記入した防災ブックのコピーや写真を、普段から持ち歩くカバンやスマホに入れておくことが重要です。

猫の日に、私たちができる「新しい約束」

愛猫を守るために、今この瞬間からできるアップデートが3つあります。

1. 「ポータブル・テリトリー」の構築
慣れないキャリーバッグやクレートなどは、猫にとっては「嫌な場所」。日々のトレーニングで「世界で一番安心な寝床」へと格上げすることで、もしもの時にも柔軟に対応することができます。

2. 「同室避難」を現実にするためのアクション
「猫がいるから避難所に行けない」という諦めを、「猫がいるからこそ、一緒に過ごせる避難所が必要だ」という社会の総意に変えていく。まずは、避難所において『人と動物の居住区分離(ゾーニング)』を具体化し、教室単位での同室避難が可能かどうかを地域の防災マニュアルで確認しましょう。

体育館のような共有スペースではなく、扉のある教室を割り当てることは、猫の脱走を防ぎ、アレルギーを持つ他者との共存を可能にする最も合理的な解決策です。

3. 「配慮の可視化」の徹底
ケージを覆う不織布カバーや、周囲へのアレルゲン飛散を防ぐポータブルな清浄機。これらは猫を守る盾であると同時に、周囲の不安を論理的に解消する強力な武器になります。「マナーを守ります」という約束を、具体的な装備とトレーニングによって証明していくこと。この積み重ねこそが、同室避難を「特別な許可」から「当たり前の運用」へと変えていく、最初の一歩です。

愛する猫への「誓い」を当たり前に

2月22日。この日は、単に猫を愛でるだけの記念日ではありません。

愛猫が安心して喉を鳴らすその響きを、家族の隣で丸くなって眠る姿を、どんな非常時であっても守り抜くと誓う。そんな「約束の日」にしてみませんか。

「家族だから、離れない」 このシンプルな想いは、決してわがままではありません。猫の命を救い、そして飼い主であるあなた自身の心を救うための、最も人間らしく、最も正しい選択です。

日本の避難所から「猫がいるから行けない」という諦めの声をなくし、誰もが当たり前に、愛する存在のぬくもりを隣に感じながら夜を越せる社会へ。猫の日という今日が、その未来を私たち自身の手で手繰り寄せる、きっかけになるかもしれません。

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