
ペットの災害支援を支えるものたち
豆知識
災害が起こってしまった時、「飼い主としてどのような対応をすべきか」だけでなく、ペットの災害支援を支えるサービスや活動についても知っておくことは非常に重要です。
ペットの災害支援にはさまざまなものがあります。特に被災地において、ペットの支援活動に不可欠なのは「人材」、「物資」、「資金」の3つの要素です。これらは通常時から、自治体や関連団体などが事前に準備を進めていることがほとんどです。
飼い主の立場からは直接関連することは少ないかもしれませんが、被災者支援のためにどのような活動を行っているか、ぜひ目を向けてみてください。
人材の確保、ボランティアや広域支援との連携
災害時にペットの支援活動の中心となるのは、自治体や現地動物救護本部等です。円滑な救護活動のためには、ボランティアの数も数多く必要となります。
動物愛護推進員、地方獣医師会、民間団体といった各団体についてはもちろん、一般ボランティアの力も欠かせません。
発災後の混乱した時期にボランティアを受入れ、管理することは難しい場合が多いことから、自治体等は、ボランティアの登録制度の創設やボランティア講習会を定期的に行うなど、自治体や現地動物救護本部等の活動方針に協力できる団体や人材の育成に努めています。また、ボランティアのコーディネートを担うため、広域支援により他の地域の人材が現地に入り、ボランティア活動のコーディネートが行える体制を検討していることもあります。
また、地方獣医師会は会員の獣医師に呼びかけて、災害時に協力が可能な獣医師のボランティアや動物病院を、あらかじめデータベース化しているところもあります。
各獣医師会の災害時の体制や、地域支部等が自治体と結んでいる 災害時協定の内容を把握し、都道府県等と情報を共有しておくことで、 災害の発生時にはいち早く獣医師に協力を要請することができるのです。
物資の備蓄 • 提供、救援物資の受付 • 配布
災害発生時に、速やかにペット対策活動を開始するためには、平常時から必要な物資を備蓄しておく必要があります。物資の備蓄場所は、主に動物愛護センターや保健所など、災害時にペット対策活動の拠点施設になる場所が選ばれます。
発災直後は、交通網が寸断し救援車両やガソリン、物資が不足するなどで、すぐに避難所に物資が届かない場合も多くあります。また、被害状況によって、それぞれの要請や必要性に応じて救援物資を計画的に配分する必要があるため、不足することが見込まれる物資は救援物資を募集するとともに、ペット災対協へ支援を要請し、必要な物資の内容や数量を調整しなくてはなりません。
仮に避難が長期化した場合は自立への支援を視野に、物資の無料配布が終了となる可能性もあります。自治体等では人手をかけて物資の仕分けや配布を行っていますが、頼りきりにならないよう、個人個人でも備蓄をしておくことが大切です。
資金の確保、義援金の募集・配布
迅速でスムーズなペット対策活動を行うためには、ペットの飼養管理、物品の購入、動物救護施設の運営などに係る資金が必要不可欠です。災害時には義援金募集の告知などを見たことがある方も多いかと思いますが、この取り組みは災害支援に、非常に大きな意味を持ちます。
自治体や現地動物救護本部等のウェブサイト、関係団体・企業等のネットワークやマスコミなどにより広報される手筈となっており、集まった義援金は、適切に収支管理が行われ、ウェブサイトなどで義援金の使途の公表もされています。
大規模災害の発生時には、自治体等の要請を背景にペット災対協が義援金の募集を開始する場合もあります。集まった義援金は、被災地のペット対策活動の支援を目的に、主に被災地の自治体や現地動物救護本部等に提供されます。
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このように、平常時から発災時まで自治体を始めとした各団体では、さまざまな支援に取り組んでいます。自身が被災した時に頼れる場所があるのは、日頃の努力のおかげでもあるのです。
もしもの時の備えは、自分たちのためでもありますが、義援金の協力や物資の提供、ボランティアの登録などを検討するのも良いかもしれませんね。
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資金確保の事例
岩手県災害時動物救護本部(東日本大震災)
動物救護活動に必要な資金は、緊急災害時動物救援本部(現ペット災対協)の義援金から配布された支援金と、県動物救護本部で開設した義援金口座に寄せられた義援金により確保しました。
義援金の募集はインターネットを通じて行い、集まった義援金の総額は2,666,954円。これらは全て県動物救護本部の活動費として活用されています。
義援金の収支の内訳については、ウェブサイト上で公表されました。
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出典
「人とペットの災害対策ガイドライン」(環境省) P.116-121 【本編Ⅳ 災害時のペット支援活動を支えるもの】を加工して作成
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002/0-full.pdf