冬に被災してしまったら?ペットと自分の命を守るチェックリストを確認しよう
防災対策
災害はいつ、どの季節に起こるかわかりません。夏の避難では熱中症や脱水への対策が必須でしたが、冬の避難ではポイントが異なります。通常のストレスに加え、「寒さ」という生命に関わる脅威が加わるのです。
先日、青森県で大きな地震が発生しましたが、特に寒さが厳しい地域では雪の中での避難や、ライフラインの停止による寒さなど、重大な危機に晒される可能性が高くあります。
避難所の冷気、降雪、そして停電による暖房停止は、特に体力の低いペットや高齢の子にとって、命に関わるリスクとなります。体温が低下すると免疫力も落ち、肺炎の罹患や持病の悪化につながりかねません。
このコラムでは、ペットの命を守るために、冬の避難時に絶対に確認したい「備えのチェックリスト」をご紹介します。
冬の避難は「寒さ」との戦い。愛するペットの命を守るチェックリスト
備えのチェックリスト①:寒さをシャットアウトする「保温セット」の備蓄

命を維持するための体温をどう守るかが、冬の避難生活の鍵です。避難バッグには、寒さを遮断し、暖かさを確保するアイテムを優先的に加えましょう。
- 防寒・断熱材の活用
ペット用毛布や、飼い主さんの匂いがついた厚手のタオルは必ず用意しましょう。防寒はもちろん、ペットの安心感にもつながります。ケージの底や周囲に敷くための新聞紙やアルミシート(エマージェンシーシート)も非常に有効です。これらは冷気を遮断し、体温が奪われるのを防ぐ断熱材として機能します。
- 簡易暖房の準備
低温やけど防止のためタオルで包んだカイロや、長時間温かさを保てる湯たんぽ(水筒などでも代用可能)を備蓄しておきましょう。電池式のヒーターなどもあれば、さらに安心です。 - ウェアの準備
短毛種や体力の低い子、また、寒冷地に住んでいるペットは、防水性・防寒性のあるペットウェアを防災バッグに入れましょう。濡れは体温の低下に直結するため、予備のウェアも用意できると理想的です。
備えのチェックリスト②:移動と衛生に関する「安全管理」

冬に避難所への移動中する場合、降雪や凍結などによる悪路で思わぬトラブルを招きかねません。また、雨や雪などで身体が濡れたり冷えたりすると、体調を崩すおそれがあるため、しっかりとした安全管理が必要になります。
- 避難時の移動への工夫
降雪や路面凍結がある場合、キャリーケースやカートが滑りやすくなります。厚手の布で包んで運んだり、キャリーの底に滑り止めをつけたりするなど、飼い主自身の転倒にも注意しながら、安全に移動する工夫をしましょう。 - 徹底した水分管理と乾燥
帰宅後や避難所に戻った際は、濡れた体や足元を乾いたタオルで徹底的に拭き取ることが不可欠です。濡れたままでは、体温を急速に奪われてしまいます。
備えのチェックリスト③:種別リスクに対応した「専用ケア」

避難時および避難所での生活では、犬も猫も原則としてキャリーやクレートの中で過ごします。しかし、その環境下で命を守るためのリスクは、犬と猫で大きく異なります。
1. 犬の専用ケア(屋外対策)
犬は避難生活においても、排泄や気分転換のために散歩など、屋外に出るタイミングがしばしばあります。冬場は特に、この屋外での行動が凍傷や体温低下のリスクに直結します。
- 肉球の保護を徹底
凍傷や雪によるひび割れ、融雪剤の付着を防ぐため、犬用ブーツや肉球を保護するワセリンなどのクリームを準備しましょう。 - 完全乾燥
雪や雨で濡れた場合はすぐにタオルで拭き取り、完全に乾燥させることを最優先にしてください。濡れたままでは、体温が急速に奪われてしまいます。
2. 猫の専用ケア(屋内対策)
猫は原則として収容スペースから出さないため、健康管理は「ケージ内の保温と安定」がキーポイントとなります。
- 泌尿器系のトラブル予防
猫は寒さとストレスで、膀胱炎や尿路結石などの泌尿器系の病気を発症することがあります。キャリー内の保温を徹底し、ぬるま湯を少量ずつ与えるなど、意識的に水分を補給してあげましょう。 - 保温と安心の強化
キャリーケース全体を毛布で覆い、安心できる暗さと暖かさを確保することが、ストレスによる体調不良を防ぎます。
備えのチェックリスト④:冬特有の「健康リスク」への対応

寒さはペットの持病や免疫力に直接影響を与えます。普段以上にデリケートな健康管理が必要です。
- 慢性疾患の管理
関節炎など、寒さで痛みが悪化しやすい持病を持つペットがいる場合は、鎮痛剤や常備薬を多めに準備しましょう。最低でも7日分は持っておくことをオススメします。薬の不足は避難生活の質を著しく低下させ、ペットにとっても苦しい時間を過ごさせることになります。 - 脱水予防と水分の工夫
冬は喉の渇きを感じにくく、気づかないうちに脱水状態に陥ることも。また気温が低いと、水入れの水が凍ってしまうリスクもあります。温かい水を少量ずつ、普段よりも意識的に、こまめに与えるよう心がけましょう。 - カロリーと栄養補給
寒さに耐えるために消費カロリーが増えるのは、人もペットも同じこと。獣医師と相談の上、普段より少し高カロリーなフードや、栄養補助食品を準備しておくと安心です。
【もしもに備える】対策が不十分な時の「知恵と行動」

備蓄品が足りない、または使えない場合や、避難所まで移動することができない時など、周りにあるものを活用して命を守るための応急処置を身につけておきましょう。
- 断熱材の代用と活用
新聞紙や段ボールをケージの底や周囲に敷き詰めることで、床からの冷気を効果的に遮断できます。 - 保温材の代用
ペットボトルに熱すぎない程度のお湯を入れ、タオルや服で包んで湯たんぽ代わりにしましょう。 - 排泄対策(犬)
外出ができない状況が続く場合も考えられます。外でしか排泄ができない場合はストレスや健康被害を引き起こすリスクもあるため、新聞紙などを敷き詰めた簡易トイレを用意し、屋内での排泄を促してあげましょう。環境が変わると失敗することもありますが、日頃から室内での排泄を習慣づけておくと役に立つかもしれません。 - 連絡と相談
対策が困難な場合は、遠慮せず避難所の運営者や自治体、近隣で避難を受け入れている動物病院に状況を伝え、助けを求めましょう。親戚や友人の家に避難ができる場合は、相談してみることも重要です。
体温と水分、そして心のケア

冬の避難対策は、単なる荷物の準備ではありません。愛するペットの命を直接守る行動です。
避難生活では、「濡れていないか」「暖かい環境を保てているか」「水分は足りているか」の3点を常に確認し、ペットの小さな震えや行動の変化を見逃さないことが、飼い主としての最大の愛情と責任になります。
今日この備えを徹底することが、愛するペットを寒さという災害リスクから守り、安全な避難生活を送るための、確かな一歩となるでしょう。
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参考文献
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環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3009a.html -
ペット&ファミリー損害保険株式会社「【獣医師監修】ペットと備える災害対策、防災グッズ」
https://www.petfamilyins.co.jp/column/3213/ -
アニコムどうぶつコミュニティー「【お家でカンタン予防策!】冬を快適に過ごすには?」
https://mag.anicom-sompo.co.jp/3622 -
防災ニッポン「猛暑の夏から秋、冬へ。寒くなる季節のペット防災を考える【獣医師解説】」
https://www.yomiuri.co.jp/bosai-nippon/article/17426
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